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『聖金口イオアン聖体礼儀』作品31(せいきんこういおあんせいたいれいぎ、)はロシアの作曲家、セルゲイ・ラフマニノフが1910年に作曲した正教会の奉神礼音楽である。金口イオアンの定めた聖体礼儀に基づく無伴奏の混声合唱による聖歌であり、後の1915年に作曲された『徹夜禱』と並ぶラフマニノフの奉神礼音楽の大作である。 歌唱は教会スラヴ語による。 なお、一般に見受けられる『聖ヨハネ・クリュソストモスの典礼』『聖ヨハネス・クリソストムスの典礼』等といった表記は誤訳である〔出典:「聖体礼儀」「奉神礼」等の正教会の語彙II&誤訳例 〕。 == 作曲の経緯 == ラフマニノフはこの作品を1910年の夏にタンボフ州イワノフカの別荘で作曲した。同時代人の証言によると彼は決して熱心な正教徒というわけではなく、その彼がこうした奉神礼音楽の大作を作曲したことは驚きを以て受け止められたという。ただしこの作品の手稿には彼自身の手で「完成、神に光榮」と書きつけられており、同じ言葉は最後の作品となった『交響的舞曲』の手稿にも見出すことができる。 元々ラフマニノフの創作において正教会聖歌の旋律は主要な着想の源泉だった。モスクワ音楽院在学中にはステパン・スモレンスキイによるロシアの教会音楽についての講義を受講しており、すでに1897年にはスモレンスキイから聖体礼儀の作曲を勧められていた〔ラフマニノフは後に作曲した『徹夜禱』を1909年に永眠したスモレンスキイの思い出に献呈している。〕。 さらに熱心に彼に宗教音楽の作曲を勧めたのはアレクサンドル・カスタリスキーだった。カスタリスキーは1903年に自身の宗教音楽の作品の一つを次のような上書きとともにラフマニノフに贈っていた。 畏敬すべきセルゲイ・ヴァシリエヴィチ・ラフマニノフ氏へ、カスタリスキーより。この世界にはラフマニノフ氏の霊感をがまん強く、しかし執拗に待ち望んでいる人々がいることを思い起こさせんがために。 ラフマニノフが聖体礼儀を作曲するに当たって助言を仰いだのもやはりこのカスタリスキーだった。ラフマニノフはこの作品を完成させると友人のニキータ・モロゾフへの(当時ロシアで用いられていたユリウス暦で)7月31日付の手紙で次のように述べた。 ちょうど今聖体礼儀を書き上げたところです。…聖体礼儀についてはかねてから考えていて、熱望していたのです。ふと何気なく取りかかってみたのですが、すぐに夢中になりました。それからは一気に仕上げてしまいました。これほどの喜びを以て作曲できたのは『モンナ・ヴァンナ』〔未完に終わったオペラ作品。〕の時以来久しくないことでした。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「聖金口イオアン聖体礼儀 (ラフマニノフ)」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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